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技術解説 フォアハンドストローク

フォアハンドストロークを打つとき、どうして左手を前にだすの?左手の役割って何?

投稿日:2018年9月18日  更新日:

Photo by Marianne Bevis

今回は、フォアハンドストロークを打つときに、ラケットを持っていない左手(左利きの人であれば右手。以下、右利きの人を想定して、左手と書きます。)をどうするのか、というお話です。

フォアハンドストロークを片手で打つ人であれば、左手をどう動かすべきなのか、ということを一度は考えると思います。

この問題については、色々な方が色々な説明をされていますが、私の考えを解説します。

テークバックで左手を体の前に出す理由

上の写真のフェデラーのように、通常、フォアハンドストロークのテークバック(バックスイング)では、左手を体の前に出します。

左手をどの方向に出すか、という点については選手によって違いがありますが、フェデラーなど、多くの選手は、ボールの飛んでくる方向に対して90°前後「右」の方に出しています。

このように、左手を出すのは、次の2つの理由からです。

理由①:上体をひねるため(上体がひねられた状態を保つため)

上体をひねるというのは、厳密にいうと、胸椎を回旋させるということです。

左手を体の前に出すことにより、胸椎を回旋させやすくなります。

テークバック時に胸椎を右に回旋させ、フォワードスイング時にそれを戻すことにより、ラケットのスイングスピードを上げることができます。

左手を出す方向は、ボールが飛んでくる方向でも構わないのですが、フェデラーのようにボールが飛んでくる方向に対して「右」方向に出すと、自然と胸椎が回旋されることになります。

なお、テークバック時に、ラケットに左手を添えたまま上体を右にターンさせる場合(このようなターンのことを、一般に、「ユニットターン」と呼びます。)、そのターンによって、既に胸椎は回旋され、また左手は、体の前に置かれていることになります。

このような場合は、上体をひねるために左手を出すというよりは、ユニットターンによってひねられた上体が早く戻ってしまわないようにするために、すなわち、上体がひねられた状態を保つために、「左手を前に出したままにしている」という表現の方が適切かもしれません。

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錦織選手は、テークバック中は、ユニットターン時の左腕の形を、ほとんどそのままキープしていて、まさに、左手を体の前に出したままにしている、という感じですね。

左手を前に出した時に、フェデラーのように左肘が伸びている選手と、錦織選手のように左肘が曲がっている選手がいますが、胸椎が回旋されているのであれば、どちらでも構いません。

理由②:体のバランスを保つため

左手をだらんと下におろしておくよりも、前に出しておいた方が、体のバランスを保ちやすくなり、ラケットのスイングも安定しやすくなります。

ちなみに、これは、フォアハンドボレーについても当てはまることです。フォアハンドボレーのときも、左手は、体の前に出ていますよね。

体の前に出した左手は、その後どうするのか

ここが、最も議論のあるところかと思いますが、私の考えは次の通りです。

すなわち、左手は、ボールを打つまで体の前に残しておきます

これについて、以下で詳しく説明します。

Photo by Marianne Bevis

左肘は曲げる(屈曲させる)

フォワードスイング中は、左肘を曲げながら、回旋された胸椎を元のポジションに戻していきます。

左肘を曲げることで、ラケットのスイングを妨げることなく、左手を体の前に残しておくことができます。

左手は体の前に置いたまま

では、なぜ、左手を体の前に残しておくのでしょうか。

それは、左手を体の前に残しておくことで、胸椎が早く左に回旋しすぎてしまうこと(この現象のことを、一般に、「体が開く」と表現します。)を防ぎやすくなるからです。

仮に、左手を体の前には残さず、左手を体の左横(あるいは後ろ)の方に持っていってしまうと、それにつられて、胸椎が左に回旋しすぎてしまいます。

先ほど、胸椎の回旋(上体のひねり戻し)を使うことで、ラケットのスイングスピードを上げることができると説明しましたが、早くに左に回旋しすぎてしまうと、エネルギーをロスすることになります。

どういうことかと言いますと、まず、意図した打点におけるラケットのスイングスピードを最大限に上げるためには、胸椎の回旋に適切なタイミングでブレーキをかけ、それによって生じる力(慣性力)を腕に伝えることが必要になります(このように、運動している身体のある部位の減速は、それと連結する部位を加速させることになるのですが、このような減速と加速の連続を、一般に、「運動連鎖」と呼んでいます。)。

胸椎を早くに左に回旋し過ぎてしまうということは、適切なタイミングでブレーキをかけることができていないということですから、適切な打点においてラケットのスイングスピードを最大限に上げることができないということになります。

また、体が開いてしまっているという姿勢は、右腕でボールを力強く押し返せる姿勢ではありませんから、ラケットをフルスイングするのではなく、相手のボールをブロックするような場面でも、理想的な状態ではないということになります。

左肘は体の後ろに引く?

上記のような、私の説明とは異なり、「左肘を体の後ろに勢いよく引くことで、上体をするどく回し、ラケットのスイングスピードを上げることができる」と考えられている方も、いらっしゃるかもしれません。

確かに、左肘を体の後ろに引いたほうが、上体(胸椎)を速く回すことができるかもしれません。

しかし、先ほども述べたように、上体を速く回すことができたとしても、タイミングよく減速させなれば、ラケットの最大限の加速を得ることはできないのです。

左肘を体の後ろに引くことで、上手く打てているように思えても、実は体が開いてしまって、効率的なスイングができていないという可能性もありますので、注意が必要です。

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まとめ

テークバックのときに左手を体の前に出すのは、胸椎を回旋させた状態を作るため、あるいは、回旋させた状態をキープするためですので、左手は、いわば「ストッパー」(上体をひねったまま止めておくためのストッパー)としての役割を果たしていると言えます。

また、フォワードスイング中も、左手は、胸椎の回りすぎを防ぐために体の前に残しておきますので、ここでもやはり、左手は「ストッパー」(上体が回り過ぎないように止めておくためのストッパー)としての役割を果たしています。

結局、左手はフォアハンドストロークのスイング全体を通して、体のバランスを保つと同時に、胸椎の回旋をコントロールする「ストッパー」としての役割を果たしていると、私は考えています。

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