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ストロークにおける適切な打点は、実は、それほど前ではないということについて

投稿日:2019年9月9日  更新日:

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「ストロークの打点は、『前』です!」

これは、今も昔も変わらない、ストローク指導の際の常套句とも言えるアドバイスの1つです。
テニスをやられている方なら、誰でも一度は見聞きしたことのあるアドバイスだと思います。

しかし、このようなアドバイスを受けて、「ストロークの打点は前でなければならない」という固定観念を持っているがゆえに、打点が前過ぎてしまっている人が少なくない、と私は考えています。

この記事では、ストロークにおける適切な打点は、それほど前ではない、ということについて解説していきます。

世界のトッププロの打点

世界のトッププロ達がストロークを打つ時は、もちろん、体の「後ろ」ではなく、体の「前」でボールを捉えているわけですが、実は、それほど前で打っているわけではありません。

体の「前」で打っているというよりも、体の「横」で打っているという表現の方が適当かもしれません。

百聞は一見に如かず、です。
まず、この記事の冒頭にあるジョコビッチの写真を、もう一度見てみてください。
ジョコビッチのフォアハンドストロークの打点は、体の「横」ですよね。

それでは、トッププレーヤーの動画でも確認してみましょう。

最初に、錦織選手のストロークを見てみましょう(動画は、最後まで見ていただく必要はありません。)。

続いて、ジョコビッチのストロークです。

それから、西岡良仁選手のフォアハンドストロークも見ておきましょう。

どうでしょうか?
彼らのストロークにおける打点は、皆さんが思っているよりも後ろではないでしょうか?
彼らは、多くのテニスの指導者がお手本として示すような「前」の打点では打っていません。

なぜ打点は体の「横」なのか?

それでは、トッププロ達の打点は、なぜ体の「横」なのでしょうか。

それは、ラケット(右腕)は、胸椎を回転軸とする上体の回転運動によって振られるからです。

回転運動している上体は、おおむね正面を向いたくらいのところで減速し、その後に、その回転運動に伴う慣性力によって加速した右腕(ラケット)が、少し遅れて出てくることになります。

回転運動によって生じる慣性力は、「遠心力」と呼ばれるもので、これは回転軸から遠ざかろうとする力です。
そうすると、上体が正面を向いたところで、その回転運動が減速するとき、ラケットは遠心力によって体の横方向へ大きく加速すると考えられます。
そのため、ラケットのスイングスピードが最も高くなるのは、トッププロ達の打点のような、体の「横」になると考えられます。

フェデラーのフォアハンドストロークの打点について

フェデラーのストロークの打点も、通常は、それほど前ではありません⇩

Photo by Marianne Bevis

フェデラーの顔は、ほぼ真横を向いています。これは、打点が体の「横」であるからに他なりません。

ただし、フェデラーは、下の写真のように、通常よりも、打点を前にして打つことがあります⇩

Photo by Marianne Bevis

このようなフェデラーの写真を見て、「やっぱり、打点は体の前なんだな!」と思われる方もいらっしゃるかと思います。

この時の、フェデラーの打点(絶対的な位置)は、確かに、かなり前です。

しかし、よく見てみると、フェデラーの右肩と右手(ラケット)の位置関係は、通常の打点で打っている時とほとんど変わっていません。顔の向きも、前向きではなく、あごが右肩に付きそうなくらい真横を向いています。
これは、フェデラーは、ただ右腕を前に伸ばして打点を前にしているのではなく、胸椎を左に大きく回旋させることで、打点を前にしていることを意味します。

つまり、打点の絶対的な位置は前になっているけれども、これは上体が極端に左を向いている結果であって、体の「横」で打っていることに変わりはないということです。

打点が前過ぎることのデメリット

一般の方に対して、「打点を前にして」と言うと、胸椎は回旋させず、右手だけが前に出る状態になってしまうことがあります。右肩は後ろに取り残され、右手だけが前に出た状態です。
この状態は、「打点が前過ぎる」状態と言えます。

このように、胸椎の回旋を伴わずに右手(ラケット)だけが前に出るようなスイングになると、効率的な運動連鎖が行われない「手打ち」になり、ボールを安定的に強打することは難しくなります。

速いボールを打ち返すのは得意なのに、ゆっくりなボールを打ち返すのは苦手という方は、イメージしている打点が前過ぎている可能性があります。
相手のボールが速ければ、適切な打点まで、ボールの方から来てくれますが、相手のボールがゆっくりなときは、自分から適切な打点に入っていくか、あるいはボールをしっかり引き付けなくてはいけません。このとき、イメージしている打点が前過ぎると、本来はもっと前に行くべきところで前に行くことができず、あるいは、ボールをしっかり引き付けることができず、前過ぎる打点で打つことになり、その結果、ボールを強打することができなくなるのです。

「打点を前にして」というアドバイスは、大きな危険をはらんでいるのです。

まとめ

私自身も、かつては、ストローク(特にフォアハンド)の打点は、すごく前でなければいけないという誤った固定観念を持っていて、そのために上手く打てない時期がありました。
しかし、ストロークの打点は、「前というよりも、むしろ横」というイメージを持ち、ボールを引き付けて打つことができるようになってから、ストロークの安定性が増しました。

もちろん、フェデラーのように胸椎を大きく回旋させることができれば、打点を前に取ることもできますが、体の柔軟性と高い技術が必要になりますので、簡単に真似できるものではありません。
もし、フェデラーのように打点を前にしたい場合は、「体の回転で打つ」という意識を持つことが効果的だと思います。

今回のお話は、ここまでとなります。最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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