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メドベーデフの得意戦術、「サイドラインから打つスライスサーブ」について考えてみた

投稿日:2019年5月7日  更新日:

Daniil Medvedev (RUS)

皆さん、こんにちは。

最近、ロシアのメドベーデフの試合を観ていて、「これは、本当に効果的なのだろうか?」と思った戦術について、考えてみました。

その戦術は、シングルスサイドラインぎりぎりの所からサーブを打つ、というものです。

通常、シングルスでは、センター寄りの所からサーブを打ちます。その理由は、サイドライン寄りの所からサーブを打つと、ダウンザライン(ストレート)にリターンされた場合に、そのボールを返球することが難しくなるからです。

はたして、定石に反して、サイドラインぎりぎりの所からサーブを打つことは、効果的なのでしょうか。

※なお、サイドラインの外からサーブを打つことは、テニスのルール上、認められていません。

サイドラインぎりぎりの所から打つスライスサーブ

まず、シングルスサイドラインぎりぎりの所から打つ、メドベーデフのスライスサーブを見てみましょう。


Hot Shot: Medvedev's Slice Serve Can't Get Any Better In Winston-Salem 2018

メドベーデフの相手は、ダニエル太郎選手です。

メドベーデフは、強烈なスライス回転をかけるため、また、できるだけ打点を右側にするために、トスをサイドラインの外(右側)に上げて、サイドラインの外に向かってジャンプをしながらサーブを打っています。

このポイントでは、ダニエル選手は、残念ながらサービスエースを取られてしまいます。それも、「あと少しで届きそうだった!」という感じではなく、メドベーデフに打たれたボールは、ダニエル選手から数メートル離れた所を通過していることが分かります。

それでは、なぜ、このような事態になってしまったのでしょうか。

それは、ダニエル選手が、レシーブの際に、適切なポジション(合理的待機位置)でスプリットステップをすることができていないからです。

※「合理的待機位置」については、以前、このブログで解説をしていますので、興味のある方は、ご覧になってみてください。

シングルスにおける「合理的待機位置」とは?(ポジショニング論)

これから、数回に渡って、テニスの「戦術」についてのお話をしていきたいと思います。 テニスの戦術を理解するためには、まず、 ...

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この動画の中のポイントでは、ダニエル選手は、レシーブの際に、シングルスサイドラインとダブルスサイドラインの中間あたりでスプリットステップを踏んでいます。

しかし、メドベーデフのような強力なスライスサーブを持つ相手がシングルスサイドラインぎりぎりに立っていた場合、レシーバーがスプリットステップを踏むべき場所(合理的待機位置)は、次の図1に示すような位置になります(図中の下の方にいるプレーヤーの位置です)。

ここでは、レシーバーの合理的待機位置は、センターにフラットサーブを打たれた場合にボールが通過する位置と、ワイドにスライスサーブを打たれた場合にボールが通過する位置の中間と考えています。レシーバーの周りの円(青色)は、レシーバーと飛んでくるボールとの距離を示すために入れています。

図1に示すように、レシーバーの合理的待機位置は、ダブルスサイドラインの外(右側)であり、このあたりでスプリットステップを踏まないと、ワイドに打たれたスライスサーブを返球することは難しくなります。実際に、動画の中のスライスサーブの軌道を見てみると、ダニエル選手は、ダブルスサイドラインの外側でスプリットステップをしなければ、メドベーデフのサーブに触れることはできないということがお分かりになると思います。

なお、動画の中のポイントでは、メドベーデフは、トスを普段よりも右に上げているため、コースは分からないとしても、スライスサーブが来ることは、ほぼ確実ですので、図1に示す位置よりも、さらに右側でスプリットステップをした方がよいかもしれません。

メドベーデフのように、シングルスサイドラインぎりぎりの所からサーブを打ってくる選手は、ほとんどいませんので、ダニエル選手が合理的待機位置についての判断を誤ってしまったのも仕方がないかもしれませんね。

サイドラインぎりぎりの所からサーブを打つことの有効性

結論

結論から申し上げますと、サイドラインぎりぎりの所からサーブを打つという戦術は、有効(効果的)だと考えます。

理由

まず、前述のように、強力なスライスサーブを打てる相手がサイドラインぎりぎりの所に立つ場合、レシーバーの合理的待機位置はダブルサイドラインの外になりますので、相手(レシーバー)を最初から(すなわち、サーブを打つ前から)サイドラインの外に追い出すことができるということになります。

そして、ワイドの浅いコースにスライスサーブを打つことができれば、さらに外へと相手を追い出すことができるのです。ストロークでも、アングルショットを打って、相手をサイドラインの外に追い出すという戦術がありますが、それをサーブという強力なショットで実行できるということです。

ダブルスサイドラインの外まで追い出されるというのは、追い出されたプレーヤーにとっては、かなりの緊急事態です。この場合、レシーバーとしては、クロスにアングルショットを打ち返すか、ストレートに一発逆転を狙ったショットを打つことが理想です。ですが、威力のあるサーブに対して、これらの対応を成功させることは簡単ではありません。

また、ワイドのスライスサーブを警戒していても、センター(T=ティー。センターラインとサービスラインが交わる所)へのフラットサーブが来ることもあり得ます。この場合も、レシーバーにとっては、厳しい事態となります。サーバーがセンターにサーブを打ったときの、「レシーバーの合理的待機位置」から「飛んでくるボール」までの距離を考えてみましょう。これについて、サーバーがサイドラインぎりぎりの所にいる場合(図1)と、サーバーがセンター寄りの所にいる場合(下の図2)とを比較すると、前者の場合の方が、「レシーバーの合理的待機位置」から「飛んでくるボール」までの距離が長くなります。つまり、サーバーがサイドラインぎりぎりの所にいる場合、レシーバーにとっては、センターに打たれたサーブを返球することが難しくなるということです。

図2は、サーバーがセンター寄りの場所に立つ、一般的な場合を示しています。

図1のレシーバーの周りにある円の直径は、図2のそれよりも、やや大きいですが、これは、「レシーバーの合理的待機位置」から「飛んでくるボール」までの距離が長い、ということを意味しています。

サイドラインぎりぎりの所からサーブを打つことに伴うリスク

このように、サイドラインぎりぎりの所からサーブを打つ戦術には有効性が認められますが、危険も伴います。

サイドラインぎりぎりの所に立つということは、サーバーにとっては、初めから自分のコートを大きく空けているということに他なりません。

そのため、センター寄りの場所からサーブを打った場合と比較すると、サーブが甘くなり、レシーバーにストレート方向に強打されてしまったときに、ポイントを取られる可能性が高くなります。

まとめ

メドベーデフのように、サイドラインぎりぎりの所からサーブを打つことは有効な戦術であり、特に、ワイドにスライスサーブを打てば、相手をコートの外に大きく追い出すことができる強力な攻撃となります。

また、意表を突く攻撃であることから、相手の精神状態を乱すこともできるかもしれません。

ただし、甘いサーブは許されず、サーブに威力があり、コースを狙えることが、この戦術を用いるための条件と言えるでしょう。

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