皆さん、こんにちは。
今回は、「ボールの回転」についてのお話をしたいと思います。
テニスにおいて、「ボールの回転」といえば、一般的には、トップスピン(順回転)とスライス(逆回転)の2つが挙げられます。
テニスの参考書にも、この2つが紹介されることが多いです。
しかし、私は、この2つの他に、サイドスピン(横回転)という回転を独自のものとして捉えて、このサイドスピンをコントロールできるようになることが、とても重要であると考えています。
この記事では、このサイドスピンについて解説していきます。
3種類の回転(スライス、トップスピン、サイドスピン)
ボールに回転をかける際に、ボールを転がす方向としては、大きく分けると、矢印①~③の3つの方向が考えられます。
スライス(アンダースピン)
まず、ラケットを上から下に振って、ボールを①の矢印の方向に転がすように打つと、打球はスライスの回転となります。
トップスピン
次に、ラケットを下から上に振って、ボールを②の矢印の方向に転がすように打つと、打球はトップスピンの回転となります。
サイドスピン
そして、サイドスピンですが、サイドスピンには2種類あります。
①または②の方向に転がしてかけるもの
まず、ボールを①や②の方向に転がしてかけるサイドスピンがあります。
ボールを①や②の方向に転がしてサイドスピンをかけるというのは、どういうことかと言いますと、上の図では、ラケットヘッドが横向きになっていますが、そうではなく、インパクト時にラケットヘッドが下向きないし上向きになっていれば、その状態で①や②の方向にボールが転がるようにラケットをスイングすると、ボールには横向きの回転がかかるということです。
次の動画にあるような、ボールを、ポールの外側からコートに打ち込む「ポール回し」は、このようなボールを①や②の方向に転がしてサイドスピンをかける場合の典型例です。
WOW! Rafa's incredible around-the-net forehand (CPA Shot of the Day) | Australian Open 2019
この動画では、ナダルは、ラケットヘッドを下向きにした状態で、ボールを①の方向に転がして打っています(右利きの人であれば、②の方向に転がして打つことになります。)。
このような、ボールを①や②の方向に転がしてかけるサイドスピンは、一般的にも広く認知されていると思います。
③の方向に転がしてかけるもの
私が、この記事を通して、その重要性を訴えたいのは、図における③の矢印の方向に転がしてかけるサイドスピンです。
ボールを③の矢印の方向に転がすように打つと、打球はサイドスピンの回転となります。このとき、ラケットは、グリップの方向にラケットを引くように、横に振ります。
それでは、実際に、このサイドスピンを使っているトッププロのプレーを見てみましょう。
サイドスピンを使ったプレーの実例
ここでご紹介するのは、近年成長著しい、ロシアのダニール・メドベーデフです。
彼は、フォアハンドストロークで、サイドスピンを多用します。
まずは、こちらの動画をご覧ください。
Hot Shot: Medvedev Bamboozles Federer With Backspin Volley
この動画では、メドベーデフの最後のボレーが注目されており、そのタッチはもちろん素晴らしいのですが、ここで皆さんに注目していただきたいのは、動画の0:03でメドベーデフがダウンザラインに放ったフォアハンドストロークです。
このフォアハンドストロークでは、ラケットが横に振られており、ボールに強烈なサイドスピンがかかっています。そのため、ボールはメドベーデフから見て右に曲がりながら飛び、バウンド後も、大きく右に曲がっているため、それによって、フェデラーの体勢が崩されています。
ちなみに、メドベーデフは最後のボレーでもサイドスピンをかけていて、そのため、ボールがバウンドした後にメドベーデフのコートに戻っていくわけですが、このサイドスピンは、ボールを②の方向に転がすサイドスピンの一例です。
もう1つ動画を見ておきましょう。
こちらもメドベーデフのプレーです。彼のフォアハンドストロークに注目してください。
Hot Shot: Medvedev Mashes Forehand Winner In St. Petersburg 2018
メドベーデフの1本目のフォアハンドストローク(0:04~0:05)は、トップスピンをかけて打っています。
メドベーデフの2本目(0:07)と3本目(0:10)のフォアハンドストロークは、サイドスピンをかけて打っています。
クロスにボールを打つ場合にはトップスピンを使い、ダウンザラインと逆クロス(インサイドアウト)に打つ場合にはサイドスピンを使っています。
サイドスピンのメリット
サイドスピンをかけるように打つと、⑴ダウンザラインや逆クロスへのコントロールをしやすく、また、⑵サイドスピンをかけて打ったボールは直線的な軌道で飛んでいくため、トップスピンをかけて打った場合と比較して、相手のコートに到着するまでの時間が短くなります。したがって、相手の時間を奪いやすくなります。これらが、サイドスピンをかけてボールを打つことの直接的なメリットです。先ほどご紹介したメドベーデフは、高い打点からボールを打ち込む際に、サイドスピンをかけて打っており、上の⑵のメリットを活かしたプレーをしています。
そして、サイドスピンをかける技術を習得することによる技術的なメリットとして、トップスピンとサイドスピンを組み合わせた斜めの回転をかけることも容易となる、ということが言えます。
さらに、サイドスピンをかける技術を習得することによる戦術的なメリットとして、トップスピンのボールを続けた後に、サイドスピンのボールを打って、相手のスイングのタイミングを狂わせる、というようなこともできるようになります。
このように、サイドスピンを習得すると、プレーの幅を大きく広げることができます。
まとめ
この③の方向に転がしてかけるサイドスピンは、日本人指導者の間では、「シュート回転」と呼ばれていて、そのような回転があることは、ある程度認知されているものの、これをトップスピンやスライスと並ぶ、第3の回転として捉えて、指導の中に取り入れている指導者はかなり少ないのではないかと思います。
このサイドスピンを知らなくても、テニスはできますし、教えなくても勝手にできるようになる人もいます。私自身も、誰かに教わったわけではなく、ボールの打ち方を研究する中で、サイドスピンをかける打ち方を発見しました(これは、テニスのコーチになってからのことです。)。
しかし、生徒にトップスピンやスライスを教えるのと同じように、このサイドスピンも教えた方が、間違いなくテニスの上達が早くなるというのが私の考えです。
皆さんも、メドベーデフのスイングを参考にして、サイドスピンのボールを打ってみてください。
なお、サイドスピンは、フォアハンドストロークだけではなく、バックハンドストロークでもかけることができます。トッププロの中では、アレクサンドル・ドルゴポロフが、バックハンドストロークのサイドスピンを多用しています。興味のある方は、チェックしてみてください。
今回のお話は、以上となります。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。